私たちhome’s viスタッフ自身が「この人から学びたい!」と思うファシリテーターを招き、参加者と共に学び、深め合う「場づくりカレッジ2017」。第2講は基礎編としてコミュニティーファシリテーション研究所所長の廣水乃生さんを講師としてお迎えして、場で何が起こっているか見立てる力、特に葛藤・対立が起こった時にどのように扱うのか、2日間にわたって学びました。廣水さんの「葛藤・対立のファシリテーション」の講座は2014年から4回にわたって開催されており、複数回参加する方と初参加者が混ざり合い、学びの場を深めています。今回の講座は過去参加者からコアチーム(チームコミファシ)が生まれ1日目の場をもちました。コアチームが場をもつという今までにはない挑戦をした2日間を報告したいと思います。
目次
2日間の概要
「私たちが学んできたコミュニティーファシリテーションを伝えたい」という思いからチームコミファシのメンバーが場をホストして講座が始まりました。場を見立てることや葛藤・対立を扱う難しさを実感しながらも、コミニュティーファシリテーションを深めたい姿勢は場に居合わせた人たちに伝播していきます。2日目には講座中で学んだことを、ロールプレイをしながら廣水さんが解説していくことで、コミュニティーファシリテーションの考え方が紐解かれていきました。
講師紹介
廣水乃生(ひろみず のりお)
コミニュティーファシリテーション研究所所長。東京学芸大学大学院教育学研究科終了後、7年間教員を務める。教育を通して人と人とのつながりの大切さを感じ、学校と地域、行政と住民、親と子供など異なる立場の人たちの橋渡しをすることを目指し教諭を退職。米国プロセスワーク研究所大学院にて葛藤解決・組織変革ファシリテーションマスターコースを修了し帰国後、コミニュティーファシリテーション研究所を設立。現在、各地で困難な状況への取り組みを通じて個人の自発性やグループの協調性を高めるために組織変革ファシリテーターとして企業、行政、NPO/NGOなどの多岐にわたる組織・現場に関わっている。
コミュニティーファシリテーション:プロセスワークを基礎とし、様々な立場の声が影響し合う場(コミュニティー)でのファシリテーションにおいて、誰にでも活用できる方法論の確立を目指して、廣水乃生氏により10年前に設立されました。プロセスワークは物理学者アーノルド・ミンデル氏がユング心理学に出会い、その考え方を身体症状や関係性に展開することで生まれた対話手法です。これまで、南アフリカ、アイルランド、イスラエル等の紛争解決や輪唱心理、コーマワークと呼ばれる昏睡状態の人との対話まで幅広い方向に展開されてきました。
1日目午前 チームコミファシの挑戦
1日目の始めは円になって廣水さんとチームコミファシのメンバーが今回の講座に対する思いを聞きました。
廣水さんは「コミニュティーファシリテーションを探求していくうちに廣水さんの視点がマニアックになりすぎている。コミュニティーファシリテーションの面白さや重要な部分をチームコミファシのメンバーがどのように伝えているのか知りたい。」チームコミファシのメンバーは「廣水さんから学んできたことを私たちの視点でわかりやすく説明したい。」思いからチームコミファシがホストする場がつくられました。
緊張した面持ちからチームコミファシの場が始まります。参加してくれた人の意見を今回の講座にくみ取って場を作りたい思いから、「自己紹介と今回の講座に期待すること」を参加者、スタッフが円になりながら話しました。
チェックインが終わった後はそれぞれのグループに分かれて「葛藤や対立を感じたときはいつですか?」をテーマに話し合いました。
直近に控えるイベントの構成に対する葛藤、職場の中に起こっている対立など様々な葛藤が上がりました。
その後、グループで出た意見を全体で共有した後に、一つの葛藤・対立の状況を取り上げて何故、対立しているのか、当事者の理解を深めるために、対立するロールに分かれて意見をぶつけ合いました。
1日目午後コミュニティーファシリテーションについて
1日目の午後は廣水さんが行ってきた活動やコミュニティーファシリテーションが目指すところについて講座が展開されます。
コミュニティーファシリテーションの世界観では人と人とが集まる場を“波”のように見立てます。(量子力学の概念から生まれたそうです)コミュニティーファシリテーションはその波を起こすのではなく、その波を見立てて起こっている変化に対して乗りこなすことがファシリテーションであるとおっしゃっていました。
もう一つ大事な考え方で“自分自身が選択的である”ことがあげられます。選択的であるからこそ自己肯力感が高まり幸せであるとかんじられます。この2つがあるからこそ、今自分がどういう状況なのか気づく力(Awareness)と気づいて行動する力(selfcontrol)の2つがファシリテーターとして重要だとおっしゃっていました。
講義が終わった後は、葛藤・対立する構図を明確化するワークを2人1組になって行います。葛藤や対立と聞くと当事者になりたくなかったり、避けてしまったりしてしまうと思いますが、「葛藤は多様性への扉」であり、その扉をきっかけに多様性を理解するための探求がはじまります。
チームコミファシの挑戦から、コミニュティーファシリテーションをする難しさを肌で感じましたが、コミニュティーファシリテーションを深めたい!という姿勢は場に伝播して、会場が一つの方向に進んでいる雰囲気を1日目は感じました。
2日目午前コミュニティーファシリテーションを深める
2日目の始まりは円になって「今の気分や体調」を話し合った後に、「今日自分が獲得したい事」「疑問・質問」を出し合いました。
・「純度の高い場の見方」養い方
・介入した場の引き際
・具体的にどのように介入したらいいのか。
・量子力学をかみくだいて説明してほしい。
・未来という言葉の危険性について
などなど、葛藤や紛争解決の具体的な方法や抽象的な概念の説明など、幅広いテーマがでました。そのうえで、すぐに答えられる内容と、午後に行われるワークを通して解説される内容に分類して解説がおこなわれました。
2日目午後 対話を通してのロールプレイ
昼休憩の間に「葛藤・対立が起こっている状況のトピック出し」「場からでたトピックを深める」「深められたトピックを展開する」の3つのタームにごとにファシリテーターを募り、参加者の方々がそれぞれのタームごとに場をもって実践していきます。もちろんすぐに実践!ではなく、廣水さんのアドバイスを受けながらファシリテーションをしていきました。
上の写真が実際に上がったトピックの一覧です。このトピックの中から今回の講座では“どうしても合わない人と仕事・プロジェクトをするには?”というトピックについて扱っていきました。
葛藤・対立が起こっている状況では当事者が抱えるエネルギーの質をとらえることが肝になります。その当事者が何を考え、どのようなエネルギー感でその状況が生まれているのか理解する為に、ロールプレイを行いました。
ロールプレイ:対立構造の解決策としてそれぞれがロール(場に立ち現れている役割)をとらえることが重要になります。ですが、人数が多い場合の対立構造になるとどの人がどのロールをとっているのかつかむのが困難になります。ロールプレイは立場ごとにロールを固定することによって対立する関係を融和する形へ展開することができます。
コミニュティーファシリテーションは集団の葛藤・対立を扱うだけでなく、個人の中のプロセスも扱うことができます。上の写真は、ボディーワーク(身体のチャンネル)を使って身体から発せられるシグナルを掴もうとしている様子です。手と手を組み合って、力の生成や消失(怒り・悲しみが消失するむなしさ)のプロセスを体で感じています。身体のチャンネルを掴みながら頭のチャンネルを展開していくことによって個人のプロセスが展開されていきました。
「純度の高い場の見方はなんですか?」と参加者の方が廣水さんに問いかけたときに、「場で起こっているプロセスを考える。そのうえで自分の中のプロセスを考えること。」だと、廣水さんはおしゃってました。
そして、最後のチェックアウトの時間。「自分の変化、場の変化を確認できた!」「場のプロセスが私のプロセス。まだ、昇華できていない部分がある。」感じることはさまざまでしたが、明日に向け学んだことを昇華したいという意思がチェックアウトで感じられました。
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