本日、新刊の発売日です。~あとがきの内容をシェア | home's vi Blog

本日、新刊の発売日です。~あとがきの内容をシェア

いよいよ、私嘉村賢州と天外伺朗さんとの共著「ティール組織の源へのいざない」の発売日です。少し反響にドキドキしますが、せっかくなのであとがきの内容をシェアしたいと思います。購入を検討されている方のヒントになれば。

 

この本は天外さんのお声掛けの元、ダイアモンドメディアの武井浩三さんにもサポートに入ってもらい2019年1月~3月に開催された「嘉村塾」の講演内容をベースとして編纂されています。本来は2019年中の出版を目指していたのですが、どうしても私の方の原稿の進み方が悪く、半年以上遅れての出版となってしまいました。改めて、辛抱強く待っていただいた天外さん、内外出版社の関根さんに感謝を申し上げます。

 

こうしてずるずると原稿の完成を延ばし、いよいよ仕上げないといけないというときに世界に予想もしなかったコロナ禍が起こりました。世間の声の中に、こういう時こそ強いリーダーがビジョンを示し引っ張っていくべきだという声と刻々と、状況が変化していく中また在宅の仕事環境など旧来のマネジメントが機能しにくい状況下の中で現場の一人ひとりが自分の信念に照らし合わせ自ら判断できる組織になっていかなければならない、という二極の方向性が生まれつつあります。そういった状況の中、原稿の校正が終わり今あとがきを書こうとしていることに不思議な必然性を感じます。

 

ちょうどコロナ禍がまさに顕在化しようとしていた3月末、二人の外国人のゲストを迎えて英治出版様と共にイベントを開催しました。ゲストは本著でもよく事例として取り上げたビュートゾルフの代表ヨス・デ・ブロックさんの息子さんにあたるタイス・デ・ブロックさん。そして600人規模の精神病院であるハイリンゲンフェルトの創設者のヨアヒム・ガルシュカさんでした。日本におけるホラクラシーの第一人者でもあるNOLの吉原史郎君もゲストとして迎えた対談イベントでしたが、その途中の質問で思い切って「こういった状況下でそれぞれの組織ではどういう風なことが起こり、どのように解決していくのですか?」というストレートな問いを投げかけたのです。頭の中の組織論ではなく、リアリティのある組織論として今しか聞けないと思い投げかけました。ビュートゾルフでは現場からの声が上がり臨時のプロジェクトが組成され動いているという話がされ、ヨアヒムさんからは「こういう時期に恐れで動いて良いことは一つもないんだ。私たちはこの状況から何が学べるだろうかという問いをみんなと探求して行動していくんだ。」と語りました。終始彼らの穏やかでそして人を信じるその在り方に、心を温かくした時間となりました。

 

時は経つのは早いもので、ティール組織が出版されたのは2018年の1月です。すでに二年以上の月日が経とうとしています。さらに4年をさかのぼった年に私はティール組織という概念を初めて知りました。知った瞬間、心にざわめきを感じ、何も手掛かりがない中、海外の実践者、探求者と交流しながら学びを進めてきました。その中でご縁があり、日本版の本の解説を担当させていただくことになりました。

 

しかし、その後、何度かいくつかの出版社からティール組織に関する出版のお話をいただいたりしたのですが、丁重にお断りをしています。それはその当時まだ自分自身がティール組織という世界の入り口に立っている未熟な存在ということもありますが、フレデリックが

よく「要約はあまり読まない方が良いよ。要約はその人が持っているパラダイム(世界観の色眼鏡)が反映されちゃうから」と言っているように、その深淵なる世界観と新しい故につかみにくいその叡智を簡単に扱ってはいけないという感覚を持ってたからです。そういうこともあり、当初今回の執筆にあたってもタイトルに「ティール組織」という言葉を含みたくないと話していたのを思い出します。

 

そんな中、私の中で大きく二つの理由があって今回の出版を進めようかなと心が動き始めました。一つはこの折角の広がりを流行で終わらせたくないという想いです。ティール組織が唯一正しいものという想いは全く持っておらず、さらにこれから発展したり、全く違う角度の組織経営のやり方も生まれていくとは思っているのですが、勢いよく売れたことで、少し浅い広がりになっていることを危惧しています。日本でもいくつかの組織が非階層組織=ティール組織という形で名乗り始め、それをメディアが取り上げて記事にするという流れ、ビジネスチャンスも広がってきていることにより様々なティール組織づくりのノウハウが出てきています。しかし、どうしても私にはそれらがティール組織の表面に見えるところをなぞっており、その先にはやっぱりティールは理想論だったよねという落胆が次第に広がるような予感がありました。しっかりと本質的なティールの世界観をしてほしいという想い湧き上がってきました。

 

もう一つはティール組織の著者、フレデリックラルーとの出会いです。実はフレデリックラルーはほとんど露出しない人でニューヨークから6時間ぐらい車で行ったところにあるエコビレッジに住んでいます。彼にメールを送ると自動返信メールが帰ってきます。今は家族を大切にしたいフェーズなので1週間以内に返事がなかったらNOと思ってくださいという趣旨のメールが返ってきます。実は解説を担当した当初はフレデリックには合ったことはなく、今後も会えることはないだろうとあきらめていました。しかし、日本での売れ行きが世界の中でも異例だったこともあり、フレデリックが日本に興味を持ってくれたのです。ここはタイミングと想い、英治出版の下田理さん、NOLの吉原史郎くん、ジョンソンアンドジョンソンでHRの仕事をしている藤間朝子さんと一緒にエコビレッジに足を運びました。そしてなんと2019年9月には日本に約一週間来日され学生向けのセッション、講演会そして経営者向けのワークショップなどを開催してくださいました。共に過ごしている時間の中で彼の分け隔てのない人への思いやり、ユーモア、そしてより良い世界を実現したいという情熱を幸せなことに近くで感じさせていただきました。付録でも文章を載せさせていただきましたが、フレデリックはティール組織における役割はある程度果たしたと思っていること。そして子供やそして未来生まれる孫の世代のために新たに環境問題に取り組みたい事。その二つ想いがあり、実質日本でのこの来日以降、世界においてティール組織にまつわる活動は終えるということを伝えられました。それを知った時とてもショックだったと同時に、彼がその人生の長い時間を使って探求してきた深淵なる想いや知恵をしっかり深いレベルで伝える役割が自分にはあると覚悟が決まった瞬間でもありました。

 

今回の本はそんなティール組織の深みに少し触れることが出来る内容になっていると私は自負しています。同時にこの本はあくまで入り口です。もし、この本を通じて新しい未来を歩み始めたいと思った皆さんは是非原著「ティール組織(英治出版)」を手に取ってください。さらに学びを進めたい方はまだ英語でしか配信されていませんがフレデリックが出版後たくさんのCEOと対話を進める中で気が付いた落とし穴や具体的な方法論について語った約130本のビデオシリーズがインターネットに公開されています。是非そちらで学びを進めてください。宝物のようなこれらの叡智は実はギフトエコノミーで配信されています。可能な方は是非フレデリックに寄付を払ってあげてください。

 

最後にこの本が書けるようになった背景には担当の下田理さんをはじめとする英治出版の皆さんの存在は欠かすことができません。ティール組織の解説の機会をいただいたこと、そして発売後も一緒にティール組織の叡智を探る旅路があったからこそ今の自分があると確信しています。また、日々自由に探求し動き回っていることを応援し、励まし、支えてくれているNPO法人場とつながりラボhome’s viの仲間たち、妻の嘉村こずえにも改めて感謝の想いを伝えたいと思います。

 

私は人生を通じて縁というものの力強さを信じています。何かしらの縁でつながりができた読者の皆さんと優しく美しい世界を一緒に作っていく事を楽しみにしています。

 

嘉村賢州

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